
ひょんな事から、映画「南極大陸」を観る機会がありまして、改めて「犬の生命力」について考えさせられました。
実話に基づく犬との感動エピソードが映画化された作品はいくつもありますが、南極物語は映画公開から30年以上が経った今でも色あせることなく、涙涙の大感動でした。
いい機会だったので、南極物語を軸に、マイナス45度の犬の暮らしを思いっきり想像しながらまとめてみたいと思います。
(ちなみに私が観た南極物語は 高倉 健 さんと 渡瀬 恒彦 さんの映画の方で、キムタクのドラマの方ではないです。)
生き残った「タロ」と「ジロ」の犬種
一躍有名になった2匹は「樺太犬(からふとけん)」という犬種です。
「樺太(からふと)」とは地域の名称で、場所は北海道のさらに上にある所、稚内市のさらに上の上にある縦長の島です。
説明がいらないほど寒いに違いない所で生まれ育った樺太犬の見た目は、一言でいえば「熊」。
もっふもふの立派な毛、力強い肉球と爪。
タロとジロは、極寒仕様のDNAを脈々と受け継いだ、純粋な樺太犬です。
樺太犬は極寒の地でも耐えられる被毛の量と、一般的な日本犬よりも脂肪の量が多かったと言われています。
サイズは大型で骨太ながらもスマートな体形です。
似通った犬種では「ニューファンドランド」や「ボーダーコリー」などをあげる事が出来ます。
現在ではペットとして飼育されることも減少し、純血種を目にする機会はほとんどありませんから残念ですよね。
1958年 当時の北海道には1000頭近い樺太犬の登録があり、その中から特に極寒に強いと思われる23頭が選りすぐられ、南極観測隊と共に海を渡りました。つまりこの選りすぐられた時点で、タロとジロの生命力の強さをうかがい知る事が出来ます。
ちなみに23頭の中にタロとジロのお父さん犬が含まれていたのも実話だそうです。
お腹ペコペコの「タロ」と「ジロ」
2頭が口にしていたものは、南極にいる野生動物(アザラシとか)や、その糞だと推測されています。
自らの体よりも大きい野生動物を狩猟することは2頭にとって決してたやすい事ではなかったはずです。
水の中に逃げられたらそれでお終い、また1からエサを探さなければならない。。。なんて厳しい環境か。
そのため発見された当時の2頭は限界までやせ細って、野生化していて、久しぶりに目にする人間に対しても警戒心をむき出しにし、当初は近寄ろうとはしなかったそうです。
1年もそんな暮らしが続いた
1年間もお腹ペコペコの状態が続いたわけですが、南極に残された当初からワッサワッサと獲物を獲っていたわけではなく、犬達は鎖でつながれた状態で基地に残されたんです。
ここだけ聞くととんでもない非情さを感じますが、生態系を乱してはいけないという地球上に生きる者の最低ルールとも言える事情があってのことです。
残したくて残したんじゃない事情があって、生き延びられるか実験するためでも、昭和基地の番をさせるためでもなかったんです。
隊員達だって泣く泣く、自分の子を思う気持ちで見放したんだと思います。(そうに違いない)
生き延びた理由
2頭が生き延びる事が出来た背景には数々の幸運が重なっています。
- 兄弟で関係性が良好であったこと
- 2頭ともオスであったこと
- 協力をしながら狩猟が出来たこと
- 寄り添い体温を維持できたこと
これらが考えられます。
もし兄弟でなく、一匹狼的な性格な犬が2頭だったら?(実際に映画では一匹狼派のエピソードがありますね)
片方がメスだったら?交尾して妊娠、栄養不足で母子とも育たなかったことも予想できます。
普段からワホワホと相撲をとったりして遊んでいた仲良し兄弟だったからこそ、協力して狩りをしたり、分け合ったり、丸まって一緒に寝ることもできたのでしょう。
このへんは映画でもすごくドラマチックに描写されていて、ある犬は首輪を外すことができずに死に、ある犬は氷と氷の間に落ちて死に、ある犬は我が道を行くで死に、すごく想像を描きたてられる部分です。
タロとジロとの再会の後
実は2頭は、一年ぶりの観測隊との感動の再開直後に帰国したわけではなく、その後4年半もの間、南極で任務を果たし帰国しました。
これには私もびっくりで、な、な、なんて可哀想なんだ少しは休ませてやれよ!と声が出ました。
タロはその後、北海道に戻り北海道大学植物園で飼育され、14歳で天寿を全うしました。
その後剥製にされ、北海道大学動植物園に展示されました。
もちろん今も展示されていますが、北大の植物園じたい観光コースに組まれる所ではないので、あまり人には知られていないでしょう。
ジロは帰国後、南極での過酷な生活の影響もあり5歳の早死にでした。
ジロも剥製にされましたが、映画での影響で多く関心を集めていたことから、東京上野の国立科学博物館に展示されました。
私としては、あの世に行ってからも2頭一緒にワホワホと、2頭一緒の場所で、いつまでも一緒にいさせてやりたい気持ちです。
こう考えるのは、映画に感情移入しすぎでしょうか。。。
映画「南極物語」が社会に与えた影響
これはズバリ、それまでの人間と犬の関係です。
映画公開当初は、犬と人間との感動実話が話題になりましたが、一方で犬を単なる「道具」と考えていた一部の機関への批判が高まったそうです。
南極物語の映画が、本来「犬」のあるべき姿はなんなのか、改めて考える機会を与えてくれたということです。
今私たちの多くは、犬を「ペット」として位置付けています。
しかし一昔前は「番犬」だった。
犬は人間社会をサポートする獣だった時代があるのは認めるべきことで、南極物語の実話は、その当時のものです。
タロとジロが後世に残したものは、単なる生命力を裏付ける生理学的な事実だけではなく、単なる感動エピソードでもなく、人間と犬の関係を見つめなおすきっかけを与えたことかもしれませんね。