
ここ数年で犬の平均寿命がますます延びています。中には20歳までもうすぐという犬も増えていて、家族として嬉しい気持ちもあるものの、一方で老犬との生活には様々な問題も生じています。
中でも老犬の「床ずれ(褥瘡:じょくそう)」問題はとても深刻で家族の負担となりつつあります。
爆発的なペットブームの影響が今起きています
実はここ数年で犬の寝たきり問題がますます深刻化しています。
これまでも老犬介護の問題はたびたび注目を集めていますが、寝たきりという状態に至るケースが増え始めたのはごく最近の事です。
実はこの背景には、今から15年、20年前に起きた爆発的なペットブームが関係しています。
当時はまだ日本では屋外で犬を飼育する世帯が多く、ペットといえば雑種、柴犬が定番という頃でした。
そのような状況にミニチュアダックスフンドやコーギーといったそれまで日本には馴染みのなかった犬種が登場し、テレビ、CMで話題を呼び、一躍人気犬種となりました。
ただ当時はまだこのような犬種の飼育経験者が日本に少なく、正しい情報も周知されていなかった上に、現在の様にインターネットの普及も進んでいない時代ですから、当然のことながら健康管理、飼育も手探りの状態です。
- 本来は猟犬、牧羊犬として相当な運動量を必要とすること
- 特殊な骨格ゆえに肥満予防が厳密に必要になること
- 段差やジャンプなど骨格に負担のかかる環境での飼育に適さないこと
今では当たり前とされる情報が不足していたことで、今様々な影響が出始めています。
見た目の愛らしさから爆発的に飼育頭数が伸びたこれらの犬種が、ここ数年で一気に高齢期を迎え、寝たきりという問題に直面しています。
足が短く、胴が長く、重量のある体形の犬種は高齢になると自身の胴体を支えるだけの筋力がなくなってしまい、次第に寝たきりという問題に直面するようになります。
いつもの習慣で床ずれができることも
高齢になると自然と運動する時間、遊びの時間が減少し、日中は昼寝をし、過ごす時間が増えていきます。
この時、つい高齢犬は自身がリラックスできる姿勢、体に負担の少ない姿勢で長時間過ごしてしまいます。
愛犬をよく観察してみるといつも同じ姿勢、同じ場所で眠っていることでしょう。
この習慣はなかなか飼い主がコントロールしたり、矯正できるものではありません。でもこの習慣が元で体の特定の部位にいつも負荷がかかり、皮膚が摩耗してしまい、床ずれが出来やすくなります。
特に高齢になり、体重が減少したり、被毛が抜け落ちてしまっていると皮膚が直接刺激を受けることが増え、より床ずれのリスクが高まります。
床ずれは、初期は皮膚表面の浅い傷ですが、毎日同じ場所に負荷がかかることで次第に症状が悪化し、次第に皮膚の深い部分にまで症状が広がります。
患部が化膿してしまう事があるものの、縫合処置も難しくケアがとても難しい問題です。
床ずれ防止のための素材選び
犬の床ずれを予防するためには、まず犬のいつもの寝場所、お気に入りの場所の管理から始めましょう。
- 素材は柔らかく、皮膚に刺激の少ないもの
- 丸洗いが出来、衛生的に保てるもの
- 繊維素材が患部に付着しないもの
- 通気性のよいもの
が理想的です。
例えば人間の新生児用ガーゼ素材やタオルなどがおすすめです。洗い替え用に多めに用意しておくとよいでしょう。
犬の寝場所はいつも清潔に保ち、雑菌の繁殖を抑えるように注意してあげましょう。
床ずれによって皮膚に小さな傷ができている状態に雑菌が付着してしまうと症状悪化の原因になります。
定期的な姿勢転換と適度な運動を
高齢になるとなかなか自力でこまめに姿勢を変えたり、寝返りを打つことが出来にくくなります。
犬が寝ているからと散歩や外出の機会も減りがちで、つい同じ姿勢が長時間続いてしまうでしょう。
でもできれば、犬に声をかけ、ストレスにならない程度に抱き上げ姿勢を変えたり、起き上がらせて向きを変えることも必要です。
自力で移動が難しい場合は足や腰のあたりにクッションを当て、姿勢を多少ずつでも変えてあげても効果があります。
飼い主が補助をすることで歩行できる場合は短時間でも屋外に連れ出しましょう。
床ずれは皮膚の一部が機能を失い起こります。
なかなか根本的な治療、改善方法はありませんが、適度に姿勢を転換させ、負荷のかかる部位を分散させたり、負担のかからない程度の運動をさせ新陳代謝を少しでもあげるよう工夫をしてあげることで症状が快方にむかう事もあります。