
犬もプールで運動と聞き驚かれる方もいるでしょう。
実は動物のリハビリや治療に水を用いる手法は昔からあります。
例えば馬や競走馬のリハビリ、トレーニングにも活用されています。
日本ではまだまだ施設が少なく限られた方法ですが、犬のリハビリ、治療にぜひ知っておきたい手法です。
犬のウォーターフィットネス
ヘルニア、肥満、癌治療など様々な病気を発症した時、手術で患部の処置をしただけでは完全に元の生活に戻ることはできません。
大切なことは、術後の回復期をどう乗り越えるかという事です。
この術後の回復期を着実に回復に向かわせることで、犬自身のパワーを引き出し、自力歩行や早期回復が可能になります。
例えばヘルニアを発症し、後肢の麻痺がある場合、手術ではつぶれてしまった椎間板の一部を取り除き、神経の圧迫を解消するための処置を行います。
この手術によって物理的には神経への負荷が解消され、麻痺が軽減し、次第に自力歩行が可能になると考えられています。
でも実際には、長期間の痛みと麻痺による筋力の低下が進行しているので、術後も後肢に力を入れることが出来ず、術前同様に後肢を使わずに生活をしてしまうことが多くみられます。
現在の動物医療では、この手術は動物病院へ依頼できますが、術後のリハビリ、回復期は家族が取り組まなければなりません。
ただなかなか犬の活力を引き出し、犬に運動をうながすことは難しいもので、飼い主自身もどの程度の運動量が適切なのかなど様々な面で壁に当たってしまいます。
このようなケースが増える中で、日本にも専門家が常駐する犬のウォータートレーニングの専用施設がオープンしています。
犬用のウォータートレーニングとは、ランニングマシン(ドレッドミル)を水槽の中に設置し、適度な水流を人工的に作り出すことで、犬に運動をさせる機器使用し行います。
もちろん、麻痺からの回復期は自力歩行が難しいので、ウエットスーツを着用し、浮力を活用した状態で、手足を動かすことを目指します。
水流があるので、無理なく体を浮かせることが出来る上に、水の中にいるという条件反射で自然と犬かきをしてしまうという本能を上手に活用します。
まずは水の中でリラックスすること、次は犬かき同様にゆっくりと手足を自力で動かすこと、次第に自力で適度なスピードで歩くことを目指します。
どんなにリハビリの重要性がわかっていても、なかなか犬に運動を矯正することは難しく、大切なことは犬自らが自分の意志で体を動かすことです。
ウォータートレーニングでは、レクリエーションの意味合いも多く含め、楽しく、遊びながらトレーニングをすることも大切に考えられています。
リハビリ、心臓疾患、高齢犬に向いている
犬のウォータートレーニングは海外ではすでに数十年前から普及が進み、中には大規模なプール設備を持つ専用施設もあるほどです。
海外では日本より大型な犬が多いので、ドレッドミルよりもプールでインストラクターと一緒に泳ぐ方が実用的でもあります。
このウォータートレーニングは、水の浮力を活用することで、たとえ肥満やヘルニアなどで足腰、関節への負荷がさらに負担になる場合でも安心してトレーニングに取り組むことが出来る点が何よりの魅力です。
犬の中には本能的に水を嫌う犬種も居ますが、そのような場合はまずボール遊びやボートに乗せること、ライフジャケットを着用させ決して溺れないことから体験をさせると次第に新しい遊び方の1つと認識し、次第に楽しみながらトレーニングが出来るようになります。
また高齢犬や心臓疾患がある場合など、過度な運動が体に危険をもたらす可能性がある場合にも、ウォータートレーニングならゆったりとした時間の中で十分な運動が出来るので安心です。
専用施設、専任トレーナーの元で安全第一に
ペット同伴可能な宿泊施設やドッグランなどに常設のプールが設置されている施設が増えていますが、リハビリ目的、持病がある場合の利用は必ず専任スタッフ、有資格者、獣医師の指導の元で行いましょう。
これらの施設のプールはあくまでも健康な状態で利用をすることを前提としています。
その他の事情がある場合は、運動時間、内容など細かな注意が必要になるので、決して飼い主の自己判断で安易に利用をしたり、長時間の利用をしてはいけません。
犬の肉球には汗腺があり、汗腺が水でふさがれてしまうと心拍が上がるという仕組みになっています。
リハビリ、肥満治療、心臓疾患がある場合はこの心拍の上昇を把握しつつ、運動量を調整する必要があります。
愛犬の健康状態、運動能力を見極め、無理をしないリハビリ、運動計画を立て、長期計画で取り組んであげましょう。